現場で役立つ介護テクニック

はじめに:現場で “使える” 介護スキルとは?

介護の現場では、「知っている」だけでは足りません。利用者様の安全・安心を守るためには、“実際に使える”スキルが必要です。この記事では、未経験・新人の方でも現場で役立つ介護の基本技術を、シーン別にわかりやすく解説します。


✅ 基本の介護技術とテクニック

● 体位変換

ベッド上で寝たままの姿勢を変えるケアのことです。長時間同じ体勢で寝ていると、血流が滞り「褥瘡(床ずれ)」ができてしまいます。

✅ ポイント:

  • 2時間に1回を目安に体位を変える
  • 足→肩の順で、体をねじらずにゆっくり動かす
  • 声かけをしてから行動する

● 移乗介助(ベッド⇔車椅子など)

利用者がベッドから車椅子などへ移動するときのサポートです。無理に抱えず、利用者の力を活かす「自立支援」の意識が大切です。

✅ こんなときに:

  • 食事・入浴・排泄のための移動

✅ コツ:

  • 福祉用具(介助ベルトやスライディングボード)を活用
  • 声かけをしながら「一緒にやる」姿勢で

● ノーリフトケアの基本

腰痛の原因になる“持ち上げる介助”をやめ、道具を使って介助する考え方です。

✅ 使える用具:

  • スライディングシート(横滑りで移動)
  • スタンディングリフト(立ったまま移動)
  • 移乗リフト(つるして移動)

✅ 排泄介助|トイレとオムツで対応が変わる!

👵 利用者の声: 「トイレ、間に合わなくて…なんだか恥ずかしいの」

👨‍⚕️ スタッフの返答: 「大丈夫ですよ。私たちがサポートしますから、安心してくださいね」

排泄はとてもプライベートな行為です。だからこそ、相手の尊厳を守る気配りが大切になります。

● トイレ誘導・介助

【対象者】軽度の方・歩ける方

✅ ポイント:

  • 排尿・排便のサイン(そわそわ、落ち着きのなさ)を見逃さない
  • 声かけと見守りで安全にトイレまで誘導
  • 下着やズボンの脱着サポート、プライバシー保護

● ポータブルトイレ

【対象者】立ち上がり可能、移動困難な方

✅ ポイント:

  • ベッド横に設置、移動負担を減らす
  • 使用中も目線や声かけで安心を提供
  • 使用後の清掃や臭い対策はこまめに

● オムツ交換

【対象者】寝たきりや認知症の方など

✅ 手順例:

  1. 必要物品を準備(オムツ、防水シート、手袋、タオルなど)
  2. 手袋を装着、プライバシーに配慮
  3. 清拭・肌状態確認 → オムツ装着
  4. 汚物処理・手指衛生

✅ 食事介助|”口まで運ぶ” だけじゃない!

食事は生きる喜びにつながる時間。安全と尊厳のバランスが大切です。

● 正しい姿勢で誤嚥を予防

✅ ポイント:

  • 椅子やベッドの背を100~110度に調整
  • 足裏をしっかり床に着ける
  • 頭が反らないように首の角度を安定

● スプーン操作と声かけ

✅ 工夫:

  • スプーンは小さめ、1口ずつ
  • 「次いきますね」など、安心させる声かけ

● 食事形態の確認

✅ 確認すべきこと:

  • きざみ食/ペースト食/ミキサー食の区別
  • 飲み込みが弱い人は「とろみ」を使う
  • 食事前後の口腔ケアも忘れずに

✅ 入浴介助|家庭浴と特浴の違いを理解しよう

入浴は身体を清潔にするだけでなく、気分のリフレッシュにも効果的。

● 家庭浴(一般浴槽)

【対象】歩行・座位が保てる方

✅ 注意点:

  • 入浴前に体調確認(バイタル)
  • 湯温40℃目安、入浴時間は10分程度
  • 目線の高さに立って、安心できる声かけ

● 特浴(機械浴)

【対象】重度の方・移動困難な方

✅ 使用場所:

  • 特養、老健などの医療系介護施設

✅ 工夫:

  • 入浴前に操作方法と手順を再確認
  • 全身洗浄時も羞恥心に配慮(タオル活用)

✅ 声かけ・伝え方のコツ

💬 読者の疑問(新人介護士): 「声かけって何を話せばいいのか正直わからないです…」

🧑‍🏫 筆者のアドバイス: 「難しく考えすぎなくてOK!“相手の目を見て、名前を呼び、ゆっくり話す”が基本です」

● 声かけ3原則

  • 相手の目を見て話す
  • ゆっくり、はっきりと話す
  • 名前を呼び、安心感を与える

● 難聴の方への対応

✅ 工夫:

  • 正面から話す、口元を見せる
  • 筆談ボード、メモ帳などのツールを活用

✅ プラスαのテクニックと心構え

● 新人が困りやすいシーンと対処法

  • 無反応の方にどう声かける? → 短く明るく挨拶が基本
  • 先輩に確認しづらい → 「今お時間よろしいですか?」と前置き

● 優先的に覚えるべき介助TOP3

  1. 排泄介助(頻度高&事故予防)
  2. 移乗介助(腰痛リスク回避)
  3. 声かけ・見守り(信頼構築)

✅ バイタルサインと感染対策

● バイタルサインの基本

✅ 観察する数値:

  • 体温:37.5℃以上なら要注意
  • 血圧:急上昇や急低下は危険
  • 脈拍:早すぎ・遅すぎないか
  • 呼吸数:苦しそうな様子がないか

✅ 注意点:

  • 表情・声・動作も変化のサイン
  • 普段と違う様子を見逃さない

● 感染対策の基本

✅ ポイント:

  • マスクは鼻まで覆う
  • 手袋は1利用者1回で交換
  • 体調不良時は無理せず報告

✅ 記録の書き方

● 5W1Hを意識

いつ(When)/誰が(Who)/どこで(Where)/何を(What)/なぜ(Why)/どうした(How)を押さえて記録します。

【良い例】

6月11日14時00分、○○様がトイレ後に立ち上がろうとした際、バランスを崩しそうになったため、後方より支え、声かけを行った。本人より「大丈夫」と返答あり、表情安定。

【避けたい例】

○○様がフラフラしていた。

→ あいまいな表現はNG。見たこと・聞いたことを具体的に書く。


✅ まとめ

介護の現場では、「正解は一つ」ではありませんが、安全で丁寧な対応が基本です